「これで元通り…長い間、不自由な思いをさせてすまなかった。尚人とは正直もう少し話をしたかったよ」


「…………ま……」


目が戻ったと同時、尚人の意識が薄れていく。

初めて人鬼と遭遇した時と同じように。


「…待………って…」


恒靖の腕を掴もうとした拍子にガクンと足の力が抜け、そのまま床に倒れ込んだ。


「君に会えて良かった」


そう言い残して、恒靖の姿は闇に溶けるよう消えた。


とても穏やかな表情…。


それが尚人の見た、恒靖の最後の姿だった。



(…いつかまた、どこかで……)



そのまま尚人は、眠りに誘われるように瞼を閉じた。



月を隠していた雲が風に流され、晴れていく…。
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