月隠れの庭

「家…家督…守る…?そんなものに私は興味などないっ!!」



声を荒げると忠時の脇差しを奪い、恒靖は躊躇うことなく己の腹にその刃を突き立てた。

「っ………」

刀身が臓器を貫く痛みに、恒靖は床に膝をつく。

口端から堪えきれなかった血が流れ出た。

「ば…何をする!?」

突然の行動に狼狽する父親を睨みつけると、彼はくっと笑みを浮かべる。


「これが私の答えです…私はあなたの盤上の駒ではない…これ以上、無駄に生かされ続けるなんてまっぴらだ…そんなに地位や名声が大事なら、あなたが守っていけばいい…守れるならば…」


「何だと!?」


「私は死して鬼となり、この真島の家を絶やしに再び現れる…あなたの手腕がどれほどのものか…これから拝見致しましょう…」

時崇もいなくなった今、この世に未練ない。


失うものなど何もないのだ。


何も………。


(兄上、あなたの思いを無駄にする事…お許し、下さい………)


ぐっと刃を持つ手に力を入れると、そのまま腹を真横に裂いた―――。