月隠れの庭

この距離でこれだけ強く感じるのだ、尚人の身に何もない訳がない…。

「くそっ…」

小さく呟き、来た道を戻ろうとした。

その時。


「待て!!」


声がして、流星は横から腕を掴まれる。


「お、親父!?」


自分を制した人物を見た彼は、素っ頓狂な声を上げた。

そこにはいつもと違い、怖い表情をした正成が立っていた。

「アレに近づくな」

「!!…何言って…」

「部外者が簡単に足を踏み入れてはいけない」

「はっ…意味が分かんねーよ!!」

「お前は感じないのか、あの念は人鬼の中から抜けたものだ。尚人君の方は心配しなくてもいい…それよりも部外者が不用意に領域に立ち入る方が危険だ。行き場を失った念に依り憑かれるぞ」


「…………」


本当に何も出来ない…そう悟った流星から、怒りと焦りの感情が消える。

「尚人君はお前が思っている程、弱い子じゃない。見てなさい、私たちのように霊を力でねじ伏せなくても、彼は彼なりの接し方を本能的に知っている子だから…」

言って、正成はニコリと息子に笑いかけた。

「見なさい、流星」

父親の言葉に導かれるまま、彼は空を見上げる。


「あ…!!」


その瞬間、地から天に向かって鋭い閃光が念を射抜くように貫いた。