月隠れの庭

《お前が我と正恵の何を知っているというのだ?》


鬼は問うた。


《抜け目のない…どこまで知っているのか》


下から尚人の顔を覗きこむような仕種を見せる。

「お前と正恵さんとの出会い。そして輪廻に戻るために交わした約束。後は正恵さんをこの地に留め、時々語り合っていた事。それらを正恵さんは文字にして残していたんだ・・・。僕とお前との出会いも偶然から始まった縁なんかじゃなく、この日を迎える為の必然だったとその時知ったよ」


《偶然ではなく必然…なるほどな》


「目を入れ替えたのは約束の為。僕がここを再び訪れ、互いの目を元に戻せば人鬼、お前の願いは叶うと…そうも記してあった」

言うと、尚人は傷口に貼っていたガーゼを剥がした。

ヒリヒリと皮膚を刺激する程の障気が、辺りに充満しているのが分かる。

人鬼の手が尚人の顔に向かって伸びてくると、右目が嬉しそうに痛みを帯びて反応した。


(これで終わりだ…)


尚人は心の中で、そう思う。