月隠れの庭

油断した----。

目の前で幼なじみを鬼に捕らわれてしまうなんて…。

流星は自分の不甲斐なさに、ギリッと唇を噛みしめる。


ドンドン、ドン!!


力一杯、扉を開けようとするが鍵が掛かっているかのようにびくともしない。

体当たりしても、結果は同じ事だった。


「尚人、返事をしろ!!」


…………………。


しかし彼の声は届かないのか、分厚い扉に隔てられているからか、何も聞こえなかった。

「くそーっ!!」

流星は思いっきり蔵戸を蹴り飛ばすと、扉に阿字を書く。


「此に掛けられし 暗鬼(あんき)の呪 我解き行ふ…開け!!」


両手で印を結んだ。

一瞬ふわりと風が起こる。


…だがそれだけだった。


完全に闇に包まれた庭に立ち尽くす彼は、

「どうする?」

誰にともなく呟いた。

汗が一筋、首筋を伝って流れていく。


その時。


夜空に雲が流れ、月を静かに隠した…。