月隠れの庭

「もうすぐ完全に日が暮れるし、腹減ったから帰ろうぜ」

「あ、うん…」

だが、尚人の返事は歯切れが悪い。

中でいつまでもグズグズしている様子に、流星はピンときた。

「鬼に会えなかったから落ち込んでるんだな」


「…」


「この場所が気になるんだったら、また明日来ればいいよ」

「…そうだね」

時間はゆっくりあるのだ。

尚人は頷くと戸の方へ向かった。


…リ、チリ…チリリ…


不意に右目に痛みが走る。



(えっ!?)



尚人が驚いて立ち竦んだその直後、薄暗がりの中から何かが彼の腕をグッと掴んで蔵の奥へと引き込んだ。


「うわぁっ!!」


そのまま床を引きずられ、入口から離されていく。

衝撃で、積み終えたばかりの荷物が再び崩れ落ちた。


「尚人!!」


辺りにピンした空気が張り詰める。


(鬼だ!!)


だが、異様な光景に慌てた流星が蔵に足を踏み入れようとした鼻先で、


ガシャン!!


重たい扉が中に尚人を残したまま、勢いよく大きな音を立てて閉まってしまったのだった………。