「何か、あった?」 私の様子を見て察したのか、顔を覗きこみながら聞いてくる。 だけど、言えるわけなくて 「何もない……」 精一杯に答えたら、宮野くんは私の手を引いて図書室の奥まで連れて行った。 「ダメ、言って」 力強い目に涙がこぼれる。 言ったら絶対嫌われる。 「やだ」 私が泣けば、宮野くんはいつも拭ってくれるのに 「嫌だじゃない」 今日はそれをしてくれない。 感覚が消えない。 ずっと何かが残ってる気がして 唇をこすれば宮野くんは私の手をとっていった。