「いやーーーー、やっぱプロはすげーな!」
公会堂から出てすぐ、晴海が両腕を天へと突き上げ、伸びをしながら叫んだ。
周りには同じように興奮状態で感想を言い合う人々がたくさんいる。
「うん! すごかった。おもしろかった!」
あの心を揺さぶられるすごさをもっと上手に描写したいのに、私の表現者レベルではこの程度しか言えなくて悔しい。
もどかしい気持ちを白い息と一緒に何度も吐き出す。
ふと、晴海が私をイジるときのいやらしい顔になった。
「明日香、途中で泣いてたな」
「泣いてないもん。ちょっとウルウルしただけ」
見られてたんだ、恥ずかしい。
あの時は涙をこぼしたりしないように必死だったから、晴海の視線になんて気付かなかった。
「笑ったり泣いたり、あんな表情豊かな明日香、初めて見た」
「私、そんなに無表情?」
「うん。能面みたい」
能面って、あの能面?
笑っているのか怒っているのかよくわからない、真っ白で迫力のある顔が頭に浮かぶ。
「いやいやいや。そんなことないでしょ」
「あるよ。だからついついイジっちゃうんだよなー明日香のこと。その能面をかち割って、表情が生まれるのを見ていたいんだよね」



