発声練習が終わった頃には、顔の筋肉がピキピキになってしまった。
特に顎と頬の筋肉が痛くて仕方がない。
明日はきっと、顔も筋肉痛だ。
演劇をナメていた。
これはもはや、あらゆる筋肉を使用するスポーツだ。
演者はいわばアスリート。
晴海のバキバキの腹筋やガチガチの背筋、そしてポコポコの肩筋はダテじゃなかった。
こんなに疲れているのに、まだ「台本の読み合わせ」というメインイベントに辿り着いていないのだから恐ろしい。
私の体、もつかなぁ……。
「明日香!」
高田さんに名前を呼ばれて、ビクッと肩が震えた。
「はい!」
一体どんなダメ出しが来るのだろう。
怖くて少し膝が震えた。
「今の声じゃ、1時間で喉が潰れるぞ」
「えっ……?」
驚いた。
心を読まれたのかと思った。
発生練習ではずっと大声を出していたから、実はもうすでに声帯に違和感があったのだ。
今も、水で喉を落ち着かせようとしていたところだった。
「地声は使うな。歌うときと同じように声を出すんだ」
「わかりました。あ、あーあー。慣れてなくて音がないと難しいですけど、意識してやってみます」
「セリフにも大まかな音程がある。歌だと思って声に出せ」
「はい。ありがとうございます」
高田さんは厳しいけれど、ちゃんと私がわかる例えや表現を使って指導してくれる。
怖いけれど、めちゃくちゃガラ悪いし口も悪いけれど、たぶん、悪い人ではないんだろうなということはわかった。
「よし、じゃあ台本3ページを開け。冒頭のシーンだけ、軽く通してみよう」



