「コラ! 恵里佳!」
晴海を無視して、恵里佳ちゃんは派手に音を立てて出て行った。
堤くんが私に小さく「すみません」と謝り、彼女を追う。
いやいや、君は何も悪くない。
みんなやれやれと慣れた様子だが、私は一人唖然としてしまった。
オバサンと呼ばれたのも、面と向かって邪魔だと言われたのも、初めての経験だ。
あまりに驚いて扉を見つめたままの私を、ともちゃんが気遣ってくれる。
「ごめんね、明日香ちゃん。恵里佳、ヒロインを取られて悔しいだけなの。毎回のことだし、そのうち治まるから、気にしないで」
「うん……大丈夫」
大丈夫だけど、私、これからあの子とも一緒に頑張るんだよね……?
ますます自信がなくなってしまった。
私はボーッとしたまま、みんなについて近くの居酒屋へ移動した。
「晴海にしてはまともな子連れてきたじゃんか」
タカさんが言うと、周囲にいた団員がクスクスと笑う。
「俺にしてはってどういうことっすか」
「だってお前、女の趣味悪いじゃん?」
一体どんな女を連れていたのだろう。
ちょっと見てみたい。
「俺の歴代の彼女に謝ってくださいよ!」
「やだね。お前だって嫌な思いしてただろ」
「それは……そういうこともあったけど」
晴海の元カノトークを聞きながら、酒をゴクリ。
酒の席には、高田さんは来なかった。
タカさんに聞いたところ、曲を増やすことになったから、演出を練り直しているのだろうとのこと。
酒の席で仲良くなれたら、少しは怖くなくなるかなぁと思っていたのに、チャンスはないようだ。
ため息をついた私に、ともちゃんが微笑む。
「大丈夫だってー。高田さんは怖いし、恵里佳はワガママだけど、晴海ちゃんがきっと守ってくれるよ」



