背筋がキンキンに冷えている。
手は変な汗でじっとりしている。
私はとりあえず、今テレビCMでよく流れている歌を、力の限り歌ってみる。
発声練習もしていないし、30秒にも満たないフレーズだったけれど、そこそこの出来だった。
……と思う。
歌い終わったのに、高田さんは何も言わずに目を瞑っている。
「あの、以上です」
恐る恐るそう言うと、ぱちりと目が開いた。
目が開いただけで恐ろしい。
「お前、ダンスの経験は?」
あああ、今度はいきなりお前呼ばわりですか。
全然構いませんよ、はい喜んで。
「ありません。授業で踊らされたくらいで」
「バレエは?」
「……経験ありません」
そうですよね、やっぱ歌だけじゃミュージカルなんて無理ですよね。
もう本当に怖いからさっさとこの場から解放されたい。
そう思って不合格宣告を覚悟していると。
「タカ。すぐに卓弥(たくや)に電話して、ヒロインの歌3曲増やせって言っとけ」
高田さんがこう言って、メンバーから歓声が上がる。
え? なに?
どういうこと?
卓弥って誰?
あなたに接するのは初めてだから、ちゃんと言ってくれなきゃわからないんですけど!



