高田さんは腕を組み、十数秒、私を舐めるように眺めた。
……怖い、気まずい。
この雰囲気、私も「お願いします」とか何とか言った方がいいのだろうか。
高田さんはフンと一度鼻を鳴らしてから言った。
「顔、まあまあ。スタイル、まあまあ」
「え?」
まあまあって、悲しめばいいの? 喜べばいいの?
美人ではないけど、ブスではないつもりだし、誇れるようなプロポーションではないけれど、太っているわけではない。
「明日香、だっけ?」
「はい」
いきなり下の名前を呼び捨てですか。
どこかの誰かさんみたいですね。
「舞台経験は?」
「えっと。高校時代、バンドでボーカルを」
ああ、余計に怖い顔になった。
すみませんすみません怒らないでください。
「ミュージカルは?」
「経験ありません」
あああ、更に眉間にシワが。
怖すぎる。
「入団試験だ。何か歌え」
「えっ?」
何かって……何を歌えばいいの?



