ラブソングは舞台の上で


「座って」

高田さんの声で、みんなが腰を下ろしていく。

私は晴海と同じタイミングで座った。

なんだか、すでに怖い。

さっきまでの和やかな雰囲気はどこへ行ったのだ。

私が無駄にキョロキョロしているのが目立ったのか、高田さんとバチッと目が合った。

思わず体がビクッと震える。

「……誰?」

が、ガラ悪い! 感じ悪い!

この人の下で何ヶ月も過ごせる自信がない!

私はとりあえず、素早く立ち上がった。

「牧村明日香と申します。えっと、あの、田代くんの紹介でうかがいました」

こんな自己紹介で良かったのだろうか。

何か少しでも失礼があったら殺されそうってくらいの圧力を感じる。

無愛想なプロデューサーは、初対面の私にさえ全く笑顔を見せない。

もしかして、何か気に障った?

「晴海の?」

晴海がバッと立ち上がる。

「ヒロイン役は俺が選んでいいという約束でしたよね」

「……劇団の外から連れてくるとは聞いていなかったがな」

ええっ? そうなの?

私が部外者だから怒ってるの?

「俺、彼女の歌に惚れたんです。彼女しかいないって、思ったんです」

晴海の力強い説得が、しんとした部屋に響いた。