ラブソングは舞台の上で


しばらく団員のみんなと話をしていると、誰かが階段を上る音がして、入り口の扉が開いた。

私たちが入室して以降、新たに人が来るのは初めてだ。

入ってきた男の姿を見た瞬間、それまで楽しそうにしていた彼らは、ピタリと話をやめて、しんと静かになった。

そしてみんなが立ち上がるから、私も彼らに倣う。

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます」

もう外は真っ暗だというのに、みんな大声でそう声を掛けている。

私もとりあえず同じように、おはようございますと声に出した。

彼がこの劇団の最高権力者であろうことは、この場の空気の変わり方から、容易に察することができた。

「ああ、おはよう」

無愛想に返した彼は、白髪混じりの中年男性。

小柄だが、迫力のある低い声をしている。

「あれが劇団エボリューションのプロデューサーで演出家の、高田(たかだ)さんだよ。ここの中で、一番偉い人」

晴海がこそっと耳打ちする。

やっぱりそうか。

この空気の引き締まり方から推測するに、おそらく、とても怖い人なのだと思う。

高田さんは何やら大きな紙袋をいくつか抱えている。

私たちの間を堂々と横切って、鏡張りの壁の前にドサッとそれを下ろした。