「ああ、女子高生は恵里佳(えりか)で、隣にいるのが堤(つつみ)。今は機嫌悪そうだから、話しかけるのはもうちょっと後にしようか」
「うん、わかった」
恵里佳ちゃんっていうのか。
美少女だなぁ。
艶のある黒髪がすごくいい。
彼女がヒロインをやれば、きっと華やかな舞台になったのではないだろうか。
だけど晴海は私を選んだ。
大して華のない、歌が上手いだけの私を。
「明日香ちゃーん」
「はいっ」
声をかけられた方に笑顔を向け、引き続き晴海と共に挨拶を続ける。
この劇団では、衣装、小道具、大道具はもちろん、脚本や曲も自分たちで作成しているそうだ。
演者は晴海をはじめ、体力のある若手がやるそうで、ここにいるおじさまやおばさま方は裏方なのだという。
今日この時間には来られなかった人たちも、まだまだ何人もいるというのだから驚きだ。



