ラブソングは舞台の上で


「明日香ちゃん、いくつ?」

「24です」

「ひゃ〜! やっぱ若いな! 晴海のひとつ上か」

「ちょっとタカさん。俺のヒロインなんすから、独身だからって狙わないでくださいよ」

「うるせー。お前のものは俺のもんなんだよ」

タカさんと呼ばれた厳ついお兄さんは、高畑(たかはた)さんという。

頭に白いタオルを巻いており、日焼けした肌にアゴヒゲがとても似合っている。

腕は晴海以上にムキムキで、手がすごく大きい。

年はピチピチの36歳らしい。

見た目は怖いけれど晴海以上にチャラチャラしていて、この人に絡まれると落ち着かない。

「24なら、私、同い年だよ」

「ほんとに?」

「柿谷智子(かきたにともこ)っていうの。ともちゃんって呼んでね」

ともちゃんは私とは真逆の、フレンドリーでふわふわした女性だ。

セミロングの髪の毛は、毛先がくるんと内側にカールしている。

声が高いから、舞台上で声がよく通りそう。

私の声は低めだから、うらやましい。

「ねぇ晴海。あの子は?」

「ん?」

ずっと気になっていた、制服を着た女の子。

さっきからずっと不機嫌な顔をしており、それを違う学校の制服を着た男の子がなだめている。