ラブソングは舞台の上で


ゆっくり、はっきり、告げられたはずだった。

でも、全然意味が入ってこない。

ちゃんと日本語で喋ってよ。

「え?」

「だから、奥さん」

「おく、さん?」

晴海は呆然とし続ける私の手を取り、いつかのように左手を握り、指に軽くキスをした。

その瞬間、やっと私は全ての意味を理解した。

「結婚してください」

私の涙がまた、晴海の手の甲へと落ちた。

クラッカーの破裂音も観客の歓声もないけれど、私の幸せな涙はポロポロと目から零れていった。

「はい」

晴海がくれた時計は、手首の部分がふた回りくらい大きくてブカブカだった。

明日東京に着いたら、まずは時計屋でサイズを調節してもらおう。

そのあと婚約指輪も買いに行こう。

だったらついでにお揃いの食器も買いに行かなくちゃ。

それより先に、二人で眠れるベッドが見たい。

私は晴海とそんな話をしながら、髪を伸ばした甲斐があったなと、密かに考えていた。

だってこの髪は、演技ではない本当の結婚式のために伸ばしていたのだから。






fin.






Special Thanks to my friend, T.T