扉が開く音と晴海の声に、稽古場にいた人々が一斉にこちらを向いた。
学生服を着た男女から50代くらいの中年層まで、少なくとも15人はいる。
「おう、晴海ぃ!」
「晴海ちゃん!」
あちらこちらから彼を呼ぶ声が飛んでくる。
そして視線は必然的に、見慣れない私の顔に集まってきた。
「こちらのお姉さんは?」
初めに声に出したのは、30代くらいだと思われる、顔も体も厳つい、アゴヒゲの男性だった。
「やっと見つけた、俺のヒロインです」
「牧村明日香と申します。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると、みんなは大きな拍手で迎えてくれた。
ただ一人、制服を着た女の子を除いて。
私はその一人を見て見ぬ振りをして、その他のみんなの歓迎に応えるため、笑顔のままもう一度頭を下げた。
よかった。
とりあえず、多くの人に歓迎してもらえたようだ。
晴海が「稽古場」と呼ぶこの場所は、20畳くらいの広さで、長辺の一面が鏡になっている。
パッと見はダンススタジオのような感じだ。
メンバーのみんなはフローリングに腰を下ろしていたり、数個だけあるスツールのようなものに腰をかけて談話している。
私は晴海に続いて靴を脱ぎ、部屋の中へと足を踏み入れた。



