ラブソングは舞台の上で


満面の笑みで手を差し出した晴海。

サラッとそんなことが言えるなんて、やっぱり中身は好きじゃない。

「やめとく」

冷たい顔でツッコんだが、彼はめげずに同じノリで構ってくる。

「明日香、手冷たいだろ? 俺の手、いい感じにあったかいよ」

「いい、いらない」

「即答するなよー、冷たいなー」

そう言いながら、晴海は楽しそうに笑っている。

こういうやり取りに慣れていない私をからかって楽しんでいる。

詩帆さんにはよくやられているけれど、男の子にこんな扱いを受けることなんてほとんどなかった。

不馴れな私はあしらい方がわからず、年下のくせにとついついムキになって返してしまう。

「あんた、本当に見かけ倒し。チャラい」

「別に誰にでも言ってるわけじゃないよ。一晩ベッドを共にした明日香だからこそ言えるのであって」

「なっ……」

あの日の失態を掘り返されると参る。

「でも見かけ倒しってことは、見た目だけは気に入ってくれてるってことだもんな」

「べっ、別にそういうわけじゃ……」

「あれ、違うの? 俺の腹筋、ガン見してたくせに」

敵わない。

晴海は何を言えば私が喜び、何を言えば怒り、何を言えば困るのかを、出会ってから今までの短期間で完全にマスターしてしまったようだ。

心の中を見透かされているようで、ムカつく。