私たちが付き合っていることは公言していなかったから、知っているのは詩帆さんともう一人二人くらいだ。
お互いに他の社員の目を盗んでコソコソ付き合っていたが、それを苦に感じたことはない。
だけど、彼の胸の内を探ることには心を消耗していた。
私たちは自分の気持ちや考えを表に出さないから、お互いに探り合うしかなかったのだ。
ポジティブな感情を共有することは少ないが、ネガティブな感情を無視することもできる。
めったに争いの起きない穏やかなお付き合い。
それまで恋愛を長続きさせられなかった私が、翔平とはゆるく平和に4年以上続いた。
翔平はこんな関係が心地よかったのかもしれない。
だけど、私はもっと素直になってみたかった。
彼の気持ちを推し量り、二人の関係がうまくいくよう自分をコントロールするのは、負担だったのだ。
結果その負担が重荷になり、堪えられなくなり、とうとう今年の夏に別れを告げた。
私は恋愛には向いていない女なのだろう。
それがわかって、彼と別れて以降、恋愛に積極的になれないでいる。
そんな私に恋愛の素晴らしさを知らしめるため、自他共に認める男好きの詩帆さんが、私を無理矢理合コンに駆り出したというわけだ。
結果、演劇男子と出会い、お持ち帰りされる事態に発展。
奇しくもヒロインに抜擢されることになってしまった。



