ラブソングは舞台の上で


今日はバレンタイン。

晴海と二人、甘酸っぱい気持ちでこの道を歩くはずだった。

昨日何度も味見をして焼き上げたガトーショコラは、稽古場の小さな冷蔵庫の中で眠り続けることになる。

手紙も書いたけれど、無駄だった。

こんな風になるのなら、無理して書かなければよかった。

あれのせいで、今日は少し寝不足だったのだ。

ため息をつくと、いつも以上に白く濁る。

湿度が高いらしい。

明日は雨だと天気予報に書いてあったっけ。

空を見上げれば厚い雲が夜空を白く覆い、町の光を反射しているのか、少し明るく見える。

通りに出ると、幸せそうなカップルが笑い合っていたり、彼女からもらったと思われる紙袋を抱えて表情を緩めている男性が目に入ってきた。

今の私には、目の毒だ。

ふと思い立って、後方を振り返ってみた。

晴海は見当たらない。

「バカか、私は」

半泣きで歩いている私は見るからに「振られた女」なのに、追ってくることを期待して振り返ってしまうなんて、惨めすぎる。