私は、そんな自分の殻を破りたかった。
そのための勇気が欲しかった。
晴海なら、勇気をくれると信じていた。
だけど殻の存在自体を非難されてしまったら、私はもうそこに閉じ籠る以外ない。
数秒間、沈黙。
「明日香、もう来なくていいよ」
稽古場に静かに響く、解雇通告。
この瞬間、私の心は完全に折れた。
「アンジェラは恵里佳にやってもらう。女王役はアテがあるから大丈夫だし、みんなには俺が話す。だからもう、恥ずかしい思いをしてまでやらなくていい」
「晴海……」
私、やりたいよ。
こんなに頑張ったんだもん。
最後までやりたいよ。
心では思ったけれど、彼にすがりつく気力は残っていなかった。
今謝れば修復が可能かもしれないけれど、自分の性格を否定されたショックと怒りもあって、意地でも謝ったりしたくなかった。
だって、私が悪いだなんて思えない。
「だから、もう帰れ。この稽古場から、出て行けよ」
震える低い声で吐き捨て、背を向ける。
私は足元に置いていた荷物を抱え、逃げるように稽古場を出た。
涙が止まらないし、外気で冷えて痛いし、荷物は重いし。
悲しいし。



