ラブソングは舞台の上で


みんなの分を適当に仕入れた後は、各々自分の彼のためのチョコを買うのが毎年の流れだ。

詩帆さんは「彼」がたくさんいるので、チョコを買う量も多い。

「明日香、今年は手作りしないの?」

詩帆さんがそう尋ねてきたのは、手作りチョコのための材料コーナーにいる時だった。

詩帆さんは「彼」のためにチョコをいくつか「買う」けれど、手作りコーナーで手に取るのは、毎年一人分だ。

彼が何人いても、本命の男は一人なのだ。

「しませんよ。渡す相手がいませんから」

「例の彼は? 作ってあげないの?」

「……別に、付き合ってませんから」

「付き合ってなくたって、チョコくらい作ってあげてもいいんじゃない? 明日香、色々お世話になったわけだし」

私が熱で休んでしまった日のことは、既にしつこく聞かれて話していた。

確かにチョコくらい、特別にしてあげてもいいのかもしれない。

私は一人分、材料を手に取った。

「詩帆さん、今年も例の彼にあげるんですか?」

「まあね。あのクソオヤジのことだから、どうせもらいに来るでしょ」

クソオヤジというのは、詩帆さんの本命だ。

彼女曰く、「私をこんな女にした最低の男」らしい。