2月に突入した。
この日は稽古もないので、真っ直ぐに帰宅するつもりだった。
退勤するために制服から私服へ着替えていると、ロッカーの鏡に美しい女性の顔が映り、私を見て怪しく微笑む。
「詩帆さん、怖いです」
着替えを済ませている彼女は、どうやら私を待っていたらしい。
「明日香、今日ヒマなんでしょ」
「はい、ヒマですけど」
「じゃあ決まり。仕入れにいくよ!」
私は半ば無理矢理詩帆さんの車に乗せられ、工場を出発。
「仕入れ」のための特設会場の在処を調べるのは、助手席に座る私の役目である。
そして目星をつけた会場の駐車場に車を停め、いざ出陣。
会場の看板には、ラブリーな色使いでこう書かれている。
「バレンタインショコラパーク」
会場内に所狭しと並べられている棚は、見事に全てピンク色。
そう。
私たちは、事務所の男性職員のために、バレンタインのチョコレートを「仕入れ」にきたのである。
工場の作業員のみんなの分までは準備できないが、それでも20個は買わねばならない。



