ラブソングは舞台の上で


そんな土地に住んでいる、出会って間もない女(わたし)。

今一時、恋心を抱いたからといって無責任に恋人ごっこを営んだりしないのは、晴海がこう見えて恋にまじめである証拠ともいえる。

しかし、私はそんな彼をあえて恨もう。

「せめて今だけでも」

「遠距離恋愛になったって大丈夫」

などと甘い言葉で上手く騙してくれれば、きっと私は喜んで彼の胸に飛び込んでいた。

そうであれば私は今、幸せだったはずなのだ。

晴海は私を傷つけない代わりに、幸せを奪った。

とにかく、今はミュージカルだ。

晴海の言った通り、私たちのことなんて、千秋楽以降に考えればいい。

気持ちが高ぶり切なくなってしまったら、卓弥さんが作ってくれたラブソングを歌おう。

思いっきり感情を込めて、センセーショナルに。

聞く者全ての心を震わせるつもりで。

この切なさはきっと、舞台の上で観客を魅了するための糧になる。