だけど、歌が上手いことは、私の大きな自慢でもある。

もし、コミュニケーションの場でなければ。

歌い合うのではなく、私が一方的に聞かせるだけであれば。

そう、例えばステージの上ならば。

観客の心に響くような歌を歌えるだろう。

自信過剰かもしれないけれど、そう勘違いできるくらいは訓練してきたのだ。

「よく簡単にそういう言葉が出せるよね」

「それだけマジなんだって。あんな歌声、初めて聞いたよ。明日香、素人じゃないだろ。何かやってる?」

「昔、ちょっとね」

「昔? いつ? 何?」

正直、言いたくない。

だって、全然キャラじゃないし。

「高校時代、色々と」

「高校時代? 何? 何やってたの?」

身を乗り出してきた晴海が近い。

私の答えを期待する眼差しが強い。

「ねぇ、教えて」

高校を卒業して今の会社に就職して以来、一度も口に出さなかった私の過去。

まさか、こんなところで打ち明けることになるなんて……。

「バンド、やってたの」

「バンド?」

晴海はきょとんと目を見開いた。

「ロックバンド。高校生だったけど、結構本格的にやってたの」