たまに夜中の駅やショッピング施設のショーウィンドウのところでダンスの練習をしている若者達を見かける。

どうしてあんなところで踊っているのだろうと疑問に思っていたけれど、やっと答えが出た。

自宅では迷惑になるし、踊りの練習ができる場所がないからだ。

ショーウィンドウは鏡の代わりになるからうってつけである。

しかし、だからって私には彼らに混じって人前で練習をする度胸なんてない。

夜中に踊っても人の迷惑にならない場所って、どこだろう。

私が無い知恵を絞って出した答えは、近所の小さな公園だった。

昼間は子供達が遊んでいるが、さすがに夜中に人は来ないだろう。

鏡になるようなものはないけれど、明かりもあるしトイレもあるじゃないか。

この日の稽古後、バスを降りた私はさっそく、自宅ではなく直接公園へやって来た。

「うー、さむっ!」

障害物の少ない公園は、風がよく通る。

だけど動けばきっと暖かくなる。

運動着ではないし靴もヒールのあるブーツだけど、とりあえず踊って体を温めよう。

「1、2、3、4、回ってキュッキュ」

石原さんのレッスンのときに使うフレーズを小声で呟きながら踊ってみる。

おお、案外踊りやすいかも。

地面が細かい砂利だから、ヒールでもいける。