個人練習のとき、セリフの音程だけでなく、晴海に大まかな動きを作ってもらっておいてよかった。
私でもそれっぽくできた気がする。
そう思ったけれど、やっぱりそんなに甘くなかった。
「智子! 膝が硬い! もっと柔らかく! 宮廷の召使いなのに気品が感じられないぞ」
「恵里佳は指先まで神経使え。ティーカップの下ろし方が雑。お前は女王を演じるんだろ!」
「明日香。もっと動作を大きく! そんなんじゃ舞台が粗末になるだろうが。ヒロインのお前が恥ずかしがってたら、本当に恥ずかしい舞台になるぞ」
女であろうと、容赦はない。
私たちには「はい」「すみません」「頑張ります」以外の返答はできない。
ひとつひとつの動作について、頭の向きからつま先の動きまで細かく注文が入る。
動作だけではない。
足音の立て方のバリエーションまで求められる。
脚本、音楽、歌唱、ダンス、演技、衣装、照明……。
ミュージカルって、とてつもない総合表現活動だ。
歌が多少上手いからといって、何のプライオリティにもなっていない。
ここには歌唱力に秀でている人間がたまたまいなかっただけで、私はただの初心者に過ぎなかった。



