ラブソングは舞台の上で


中には様々な書類が収められているように見えた。

よく見てみると、ハンドメイド感の強いチラシやパンフレット、台本のようだ。

そして公演した舞台の映像が収められているであろうDVDもある。

演目ごとに透明のクリアファイルへと収められており、晴海の几帳面さがうかがえた。

目に入るそれらには必ず、次の言葉が印字されている。

「劇団エボリューション?」

「そう、俺たちの劇団の名前だよ。発展とか進展とか、そういう意味」

「ふーん」

手にとってじっくり見てみると、チラシやパンフレットはキレイな状態で保管されているが、台本だけはボロボロだ。

普通のコピー用紙に印字して製本されているそれは、太いホチキスで留められたところなんかは穴になっていて、上からセロハンテープで何度も補強されている。

中は書き込みがたくさんされていて、本気度がうかがえる。

私が昔やっていたことと雰囲気が似ていて、懐かしい感じがした。

「俺さ、大学卒業したら、就職で東京に引っ越すんだ。だから今回の舞台は俺の卒業公演ってことで、俺が主演を務めることになったわけ」

「だからって、どうして部外者の私がヒロインなの? 女の子なら劇団にもいるじゃない。この子なんか、若くて可愛いし」

集合写真の中から選んで指をさすと、晴海は含みのある笑みを見せた。

どうやらこの子は彼の求めるヒロインではなかったらしい。