ラブソングは舞台の上で


扉の音で、中にいるみんながこちらを向く。

そして私を見て、顔をひきつらせる。

揉めているのは恵里佳ちゃんと高田さんのようだ。

嫌でも何となく読めてきた。

私たち、すっごいタイミングで来てしまったみたいだ。

恵里佳ちゃんは私と晴海を見るなり、悔しそうに唇を噛んだ。

「どうしたんすか?」

晴海が尋ねるが、きっと察している。

高田さんは呆れ顔で答えた。

「何でもない。いつものわがままだ」

「ヒロイン譲れってやつっすか」

恵里佳ちゃんがずっと私を睨み続けている。

どうやら『高田さんを味方につける』ための何かが、たった今実行されていたらしい。

「ああ。引き続き明日香にやらせるって言っても聞かないんだ」

えっ、本当ですか?

私でいいんですか?

もっと緊迫した中で大々的に発表されると思っていたから拍子抜けだが、とにかく、よかった。

しかし、必死な彼女の目論みは失敗に終わってしまったことになる。

「すみません。俺がちゃんとわからせてやらなきゃいけなかったですね」

「お前のせいじゃないさ。これ以上わがままが続くなら、恵里佳を役から外すよ」

それを聞いた恵里佳ちゃんは、口をへの字に歪めたまま、眉をギュッと寄せて泣きそうな顔になった。

容姿端麗、成績優秀、運動神経良好の彼女は、これまでの人生で自分の思うようにいかないことなどほとんどなかったのだろう。

たとえ意図しない方向に向かっても、努力して実力をつけ、強く訴えれば、願いが叶ってきてのだろう。

どんなに強く求めても、どんなに死力を尽くしても、思い通りにいかないことが、世の中にはたくさんある。

彼女はもしかしたら、今初めて挫折を味わったのかもしれない。