「だって、ダメだったら文字通り、お役御免なんだよ?」
しかもそれを判断するのは、あの高田さんなのだ。
「大丈夫だって。ちゃんと練習したじゃん。この間の稽古でも、マシになったなって褒めてたし」
「それ、褒めたって言わないでしょ」
「高田さんのマシは良いって意味なの」
「そんなにポジティブにはなれない」
晴海に会ったのは、元日以来だ。
あの日晴海は、私の部屋で話をした後、コーヒーを飲み干してすぐに帰っていった。
それから今日まで、どう過ごしていたのかは知らない。
卒論が何とかって言ってた気がするけど、高卒の私には何を言ってるかよくわからなかった。
いざ、新年初稽古へ。
引き続いている緊張で、目的地までの道が短く感じる。
晴海と話しながらゆっくり歩いていたつもりなのに、あっという間に高田さんの店に到着してしまった。
階段を上る足が重い……。
「ん?」
先を上っていた晴海が階段の途中で足を止め、こちらを見下ろす。
「どうしたの?」
私が訪ねると、静かに、と言うように人差し指を唇に当てた。
「中、騒がしくない?」
言われて耳を澄ますと、確かに稽古場の中から怒声のようなものが聞こえる。
この声は、恵里佳ちゃん?
階段を上り終え、晴海が扉を開いた、その瞬間。
「そんなの納得できません!」
舞台で鍛えた大きな声が私たちの耳をつんざいた。
一体、何事……?



