「……ありがと」
「今うちには食料がないから朝飯ってわけにはいかないけど、これ飲みながら落ち着いて話をしよう」
とりあえず淹れてくれたコーヒーを、出されたまま一口。
ブラックは苦手だけれど、我慢して飲み込む。
晴海のカップをチラッと覗くと、彼のコーヒーも黒いままだった。
「話?」
「そう、お互いの話」
砂糖とミルクをちょうだい、なんて今更言いづらい。
我慢したまま、もう一口。
「私、特に話すことないんだけど」
酔った私を介抱して泊めてくれたのはありがたいけど、もう会うつもりもないし。
私の表情からそれを察した晴海は、すがりつくように捲し立てる。
「いや、ほら。こちらの情報を何も与えずにヒロインお願いしてたからさ。返事がイエスでもノーでも、とりあえず話くらい聞いてほしいんだ」
熱意がすごい。
そこまで私を気に入ってくれたというのなら、悪い気はしない。
「なるほど。劇団とかミュージカルとか、私にとっては得体の知れないものだもんね。話くらい、聞いてもいいのかも」
そう言うと、晴海はパァッと目を輝かせた。
わかりやすく喜んでくれるから、やっぱり悪い気はしなかった。
「ちょっと待ってて」
晴海は立ち上がり、クローゼットから服屋の紙袋を取り出す。
袋からは、ガサッと重そうな音がした。



