さすがに恵里佳ちゃんも言い過ぎたと感じたのか、ここでいったん深呼吸をして、自分の感情の爆発を治めた。
「言いたいこと言ってごめんなさい。でも、これがあたしの本心。晴海ちゃん自身が明日香さんを選んだことも、明日香さんが頑張ってるのもわかってるけど……あたしは納得できない。絶対にヒロイン奪ってやるって思ってる」
恵里佳ちゃんは文句も言うけれど、言えるだけの努力をしているのは誰の目にも明らかだ。
「そっか……ごめんね」
歌が上手いだけの私が、あなたの努力を水の泡にしてしまって。
いたたまれなくなった私は、笑ってごまかしながら一言二言会話をして、そそくさと稽古場を後にした。
とにかく恵里佳ちゃんから逃れたかった。
稽古場を出ると、暗くなった静かな町に冷たい風が吹く。
さっきかいた嫌な汗がなかなか乾かなくて、どんどん体が冷えてゆく。
『文句いうやつがいたって、俺がヒーローらしく明日香を守るよ』
晴海の嘘つき。
全然守ってくれないじゃん。
私がこんなに困ってるのに、どこで何してるのよ。
腹が立ってきた。
あんたが避けるなら、こっちから堂々と攻めてやる。
私は歩きながら携帯を取り出し、晴海に発信。
数秒コールして、眠そうな声で応答があった。
「もしもし……」
「あなたのヒロイン、アンジェラですけど」



