むき出しの敵意は、簡単に私の胸に突き刺さる。
「え……?」
声が少し震えた。
緊張と恐怖で両頬がしびれ、変な汗が出る。
動機もするし、息苦しい。
「晴海ちゃんは明日香さんの歌が気に入って指名したんでしょ。でも歌だけだもん。あたし、負ける気がしない。演技とダンスには自信があるし、歌だって学校で音楽の先生に教えてもらってる。立ち稽古が始まったら、明日香さんとの格の違いを見せつけて、まずは高田さんを味方につけるの。そしゆくゆくは晴海ちゃんに認めさせる」
だから、覚悟してなさいよ。
鏡越しに、そう伝わってきた。
私は何も言い返せず、ただ萎縮して固まっているだけ。
6つも年下の女子高生にここまでこけにされている自分が、とても惨めに思える。
恵里佳ちゃんが立ち上がった。
スリムな立ち姿にすら妙な迫力がある。
「晴海ちゃんのヒロイン役、ずっと志願してたのに、突然現れたあんたなんかに取られたあたしの気持ちがわかる? ヒロインだけじゃない。晴海ちゃんだってそう。稽古が終わったら明日香さん。クリスマスだって明日香さん。一体あんた何なのよ!」
静かな稽古場に、彼女の怒りが余韻をもって響いた。
「何って、言われても……」
ただの元バンギャルです、なんて口答えできる雰囲気ではない。
タカさんは晴海との関係を何とかしろと言っていたが、晴海とのギクシャクより、恵里佳ちゃんの敵意の方がよっぽど深刻なのではないだろうか。



