ラブソングは舞台の上で




新年会の後、私は一人で高田さんの店の前までやって来た。

一人でここへ来たのは初めてだ。

この辺りには他にもちらほら店があるが、どこもかしこも閉まっている。

今日は元日だ。

あたりまえか。

カメラ&フォト高田のシャッターには、正月っぽいしめ縄と、

「謹賀新年 4日より営業いたします 店主」

と書かれた貼り紙がある。

私は店の横の階段を上り、郵便受けのロックを解除し、稽古場の扉の鍵を取り出し開錠した。

明かりを点けて靴を脱ぎ、大きな鏡の前に立つ。

「やるか」

バッグを床に放り、鏡の前でストレッチ。

今日ははじめから自主練するつもりで伸縮性のあるレギパンを履いてきた。

暖房の効いていない稽古場は、フローリングが冷たい。

腰を下ろすとお尻に冷たさがじわじわ染み込んできたが、構わず体を前屈させる。

まだ十分とは言えないが、体はかなり柔らかくなっている。

始めてからまだ1ヶ月も経っていないけれど、ちゃんと毎日続ければ目に見えて効果はあるもんだ。

他に誰かがいるわけでもないから、音楽はかけない。

その代わりに歌って自分で奏でる。

このミュージカルの歌の練習を兼ねるつもりだ。

一人だと広すぎる稽古場は、私の声をよく響かせてくれた。

調子に乗ってアレンジを加えながら歌っていると……

“ガチャッ”

遠慮がちに扉が開かれて、暖房が効き始めた稽古場に、冷たい空気が入り込んでくる。