ラブソングは舞台の上で


脱衣所には、本当に鍵が付いていた。

ガチャッとわざと音を立てて施錠し、自分でドアノブを捻って、開かないことを確認する。

二段になっている洗濯籠の上段に、洗いたてだと思われるバスタオルが数枚。

洗面台の下の棚には、本当にクレンジングオイルと個装された使い捨て歯ブラシがあった。

こんなものが常備されているということは、あのチャラ男、恐らく女を連れ込むことにかなり慣れているのだと見受けられる。

やっぱりモテるのだろうか。

洗面台の鏡を見ると、なるほど本当に酷い顔、酷い頭をしている。

私は遠慮なくクレンジングオイルを多めに手に取り、しっかりと顔に塗り付け、丁寧に乳化して洗い流した。

案外キレイにしている浴室でシャワーを浴びて、柔軟剤のいい香りのするバスタオルで水気を拭う。

洗った服を着たいところだが、仕方なく着てきたものに袖を通す。

布地から昨日のカラオケボックスのにおいがして、嫌な気持ちがした。

仕上げに洗面台にあるドライヤーで軽く髪を乾かし、何とか外に出られる状態が完成。

本当はヘアムースでウェーブを整えたいところだが、今日は仕方がない。

洗濯機のそばに使ったバスタオルをかけ、再び晴海の部屋へ。

「あ、お帰りマイヒロイン」

扉を開けた瞬間、ふわりとコーヒーの香りが漂った。

ちゃんと上半身にも服を着た晴海が微笑んでいる。

テーブルにはカップが二つ。

どうやら私の分まで淹れてくれたらしい。