ラブソングは舞台の上で


しばらく気まずい雰囲気で歩いた。

私の住むアパートが見えてきた頃、翔平はなにか意を決したように提案した。

「今さらだけど、本音、言い合ってみるか」

「今から?」

「うん。じゃあ、明日香から」

「え、私から?」

「そうすべきだって言ったのは明日香だろ」

翔平に対して、思っていたけれど言えなかったことはたくさんあったような気がするけれど、もう別れてしまっているし、すぐに言葉にできるレベルまで思い出せない。

「うーん、そうだな。翔平って、いつも不機嫌そうな顔してるけど、本当は優しいよね」

「俺って不機嫌そう?」

「うん。優しいけど、優しさが顔とか口から出ていかないから、ちょっと怖い」

「マジか。それから?」

「それから……やっぱ彼女としては、もっと好きって言ってほしかった、かな」

ああ、そうか。

私が欲しかったのは、言葉だったのか。

口に出して初めてわかった。

抱き締めてくれたり、優しいキスをくれたり、それで十分だと思っていたけど、違った。

言葉にして言ってほしいのに、私自身がそうとは伝えられず我慢していたから、辛かった。

もっと言葉にしてもらえていたら、モヤモヤしていた部分が昇華され、重荷に感じていたものもなかったかもしれない。

アパートまで、あと30メートル。