ラブソングは舞台の上で


私たちはしばらく、歩きながら他愛ないことばかりを話した。

見ているテレビのことや、詩帆さんがクリスマスをどう過ごしたかの予想、それから同僚が酷いフラれ方をした話。

ただ間を埋めるための、特に意味のない会話だ。

翔平が『少し話そう』と言ったのは、日常のくだらない話題のことではないとはわかっていた。

彼が本題を口に出したのは、街を抜けて住宅地に入った頃だった。

「俺、明日香に別れるって言われた理由を、ずっと考えてたんだ」

周りの家々にはまだ明かりが灯っており、所々からテレビの音やシャワーの音などが微かに聞こえてくる。

ハッキリ聞こえるのは私たちの足音と翔平の声だけだったから、彼の言葉は他の音に希釈されず濃厚な状態でガツンと響いた。

翔平は私への未練を露にしている。

そういう話題になるだろうと覚悟はしていたが、寒さも手伝って、空気が一気に重くなった。

別れた時、私は別れたい理由を明らかにはしなかった。

当時は自分でも明確な理由を認識していなかったのだ。

「どう考えても、俺たちはうまくいっていたようにしか思えない」

だから、別れたことに納得できないということだろう。

いつも穏やかだった彼の口調が、少し強い。