「はぁっ?」
何なの、その不公平な取り引きは。
今の今まで無害そうに振る舞っていたくせに。
急に男の牙を剥いて、一気に私を追い込んだ。
すっかり萎んでいた危機感が再び膨らんで、私の心臓はドキドキ暴れだす。
「だって、重い思いして持ち帰ったのに、ヒロインやってもらえないんじゃあ、一発くらいヤッとかないと割に合わないっしょー」
その論理を至極当然のように言って、私がかぶっていた掛け布団を勢いよくめくる。
私は体中を二つの意味でヒヤリとさせ、ギュッと身を硬くして構えた。
「何それ! 絶対やだ!」
別に私が連れて帰ってって頼んだわけじゃないのに。
「じゃあ、素直にヒロインやればいいじゃん」
温かい手が挑発するように私の髪を梳く。
「それもやだ」
ミュージカルとか、劇団とか、わけわかんない。
私が合コンで求めていたのは彼氏候補との出会いであって、断じて舞台のオファーではない。
視界には私に跨がる生の肉体美。
危機感と艶かしい光景に、思わずごくりと固唾を飲んだ。
「ふーん、じゃあ……遠慮なく」
「ひゃっ……!」
トップスの裾から彼の手が差し込まれた。
私は体を捩ったが、脇腹を撫でるように上へと這い上がってくる。
許可を得ていない相手に対しての遠慮など、まるで感じられない。
間もなくしてブラに包まれた胸に辿り着いた。
「うわっ、意外と大きい」
笑みを浮かべた彼の右脇腹を……
「やれるもんならやってみろ!」
私は左手で思いきり打った。



