一度、桜田門から叩き出された人間だ。


 警察社会にいる間は、警視正ぐらいまで行ければ十分と思っていた。


 出世欲はある。


 人間だからだ。


 ただ、それが過剰すぎるとまずい。


 組対関係者は関東六王会の組事務所を内偵し始めている。


 橋岡や折原など幹部の人間たちや、組の構成員を、組対四課の刑事たちが見張り続けているのだった。
 

 安原は大丈夫かな、と思っている。


 組対でもまだ若手なのだし、失いたくない人間だった。


 危険な捜査に巻き込まれるとなると、命の保証はない。


 じっと静観するつもりでいた。


 組対がどう動くかを。