「正直やってらんないと思ったこともあった。

だけど、今回の騒ぎで大切なものが分かったよ」




蒼の顔はいつになく爽やかだ。




「俺、もっと頑張るよ。

優弥の期待を裏切らないように。

それにね……」




そう言って蒼はあたしの手をぎゅっと握る。

温かくて大きなその手に触れられ、あたしの鼓動は一気にヒートアップする。




「唯ちゃんがいるから、俺は頑張れるんだ」




その眩しい笑顔に胸を奪われる。




「唯ちゃんのおかげで、どんなに辛くても乗り越えられる」





蒼、ずるい。

それはあたしのセリフだよ。





「唯ちゃん、弱くてだらしなくて面倒な俺だけど……

これからもよろしくね」




そう笑う蒼に、あたしも最高の笑顔を返していた。





不思議だな。

蒼はあたしがいなくても、飄々とやっていけると思っていた。

そつなく碧を演じて、プライベートではハルたちと笑って。

蒼に頼らないといけないのは、あたしだけだと思っていた。



でもね……

蒼もあたしを必要としてくれていたんだ。

あたし、蒼の力の糧なんだね。