「唯ちゃん、行ってくるね」




蒼はそう言って、あたしをぎゅっと抱きしめて出ていった。

あたしは、涙を我慢して笑顔を作った。






蒼は今日からFの全国ツアー。

二週間ほど帰ってこないのだ。

寂しいけど、我慢しなきゃ。

蒼もきっと、あたしのことを思ってくれている!





だるい身体で着替えを済ます。

昨日の蒼の余韻が、まだあたしの身体に刻みつけられていた。



蒼は名残惜しむように、あたしを抱いた。

蒼の優しさに触れながら、このまま時間が止まればいいのにと思った。

だけど、容赦無く朝は来る。

明け方にようやくまどろんだ蒼を見て、涙を必死に堪えていた。

ここで泣いちゃ、蒼の負担になるから。