「優弥、超スパルタなんだよ?

絶対不可能な曲を作って、俺たちは泣きながら練習する。

すごく細かいし、すごくうるさい。

だけど……

何とか出来るようになると……

すごいんだ」





そうだよね。

Fの曲って、とにかくすごい。

ドラムは少しも狂わずに難しいリズムを叩くし、ベースは主旋律ではないかというほど変化に富んだメロディー。

リードギターは基本暴走。

サイドギターは蒼がいうには「あり得ないコード変化」らしいし。

そんなサイドギターをしながら完璧な唄を披露する蒼は、凄すぎるのかもしれない。




「次も優弥がどんな化け物を作るかと思うと、憂鬱だよ」




蒼はそう言ったけど、嬉しそうに笑っていた。



蒼、優弥さんのことが本当に好きなんだなと思った。

そして、そんな蒼をますます応援したくなる。





「まぁ、でも俺は学生が本業だからね。

建築家の夢は捨てられないから」




そう言って、子供みたいなきらきらした瞳であたしを見る。

その瞳に、やられそうになる。

夢を追い続ける蒼は、かっこいいと思った。