「唯ちゃん!!」




蒼の声で我に返る。

なんと、蒼は川藤ゆりを振り切って、あたしの元へと歩いてくる。




汗で湿った髪。

黒い細身のパンツ。

たった今着替えたと見られるTシャツから覗く腕には、血管が浮き出ていた。




さっきのライブを思い出して、ドキドキするあたし。

遠い存在だと思ったけど、

あの碧が……蒼が……

あたしの近くにいるなんて!!






「唯ちゃん、反則だよ?

俺に黙って来るなんて」




反則なのは、蒼だよ。

反則なくらい、かっこいい。




「唯ちゃんが来ると、緊張して調子狂うんだから」




調子狂っていたようには、到底見えない。