雨風ささやく丘で

重い足取りで階段を上がり、気力無く私はアパートのドアに鍵を入れ、それを回した。
真っ先に向かったのはベッド。部屋の明りをつけたその時だった。
誰かが背後から思いっきり私の両肩を掴んだ。

キャーーーーー!!!

心臓が口から飛び出しそうな勢いで叫んだ。
先ほどの疲れとは真逆にパワフルな叫び声。

「夏希?夏希、悪かった!ごめんごめん!俺だよ」
はぁはぁしながらも振り向くとそこにいたのは雄人だった。叫び声に驚いたのか、びっくりした顔だ。
「何でいるの?夕方って言ったでしょ??」
私は機嫌悪くして雄人の両手を肩から振り払った。
「何時にかは言わなかった」
「…」
確かにと私は返す言葉を無くした。
「夏希…こんなに驚くとは思ってなかったよ…ごめん」
「いいの…私が神経質になってるだけ。さっきも結子とでかけてたけど、疲れ感じて帰ってきちゃったの」
「そういえばとりあえず鍵は返す」
そういうと雄人はポケットから鍵を取り出した。
「............」
「どうした?取らないのか?」
雄人は不思議そうな顔して私を見た。
「いい。雄人とりあえずその合い鍵持ってて。お願いだから今日もここで泊まって?」
「え?」
またまた思いもしなかった私の一言に雄人は驚いた。
「お願いだから。それ以上は何も聞かないで」
「ああ....」