和田美佳にとって医者の言ったその言葉は、自分の教師人生に絶望をもたらすものだった。

教師になって10年、学生時代に夢見た教師という仕事も、なってみれば日々その夢を打ち砕くものだった。

喜びがない、と言えばウソになるが、それ以上に年頃の子供たちには大人の常識が通じず、悪戦苦闘ばかりだった。


『死亡を確認しました』


・・・2度目の宣告。


去年、高木守が自殺した時にもこの病院で同じ言葉を聞かされた。

あれからの日々は、思い出すだけでもイヤになる。

校長や教育委員会は、責任逃れに必死になり和田を責めた。

一方、PTAも、いじめの事実を隠していたのではないか、と同じように和田を責めた。

・・・普段は押しつけてばかりのくせに、こういう時だけ。