最新式の一眼レフを置き
彼は祖父から譲り受けた
旧式のOLYMPUSと35㎜の
フィルムだけを持って
母親に勧められるまま
この地へやって来た。

ここに来た当初、
見るもの見るものが
止まっているかの様に見えたと言う。

やがて、ここでは
ゆっくりと時が流れて行くことに
気づいた彼は一度、帰国すると
全てを整理し再びこの地へと
戻ってきた。

「この地で本当に心から
自分の撮りたいものを
このカメラに納めて行きたい。」

目の前に広がる瀬戸内の穏やかな海を
見つめながら彼は
私に言った。