立ち上がった泡雪は無言のまま、木戸のほうへと歩いていく。






「………もう、立てるのか。


ずいぶん動けるようになったみたいだな」





「………………」







嬉しそうに言う沙霧を少し振り返り、泡雪は黙って外へ出て行った。







外の空気を吸いに行ったか、雪を食べに行ったのだろう。




沙霧はそう考えるうちに、またうとうとと睡魔に襲われる。







そのまま、泡雪の温もりの残った寝床で、再び眠りについた。













ーーーーーしかし、泡雪は戻らなかった。





次に沙霧が目覚めたときには、寝床はつめたく冷えきっていた。






いつまで待っても泡雪は戻らず、板屋には、泡雪がいた形跡はひとつも残っていなかった。