愛しい我が子を腕に抱きしめ、仲間たちに囲まれて、疾風は満足げな笑みを浮かべていた。




しかし、思わずにはいられない。





(………ここに、沙霧と泡雪もいたら、どんなにか楽しく、幸せだったろう)





叶わない景色を思い浮かべて、疾風は唇を噛んだ。




その様子に気づいた群雲が、父の顔を心配そうに見上げながら、





「どうかしたのか、親父。変な顔をして」





と訊ねた。



疾風ははっと我に返り、笑みを浮かべる。





「何でもないさ。変な顔はもともとだ」




「じゃあ、息子の俺も、将来は変な顔になるのか」




「今でもそう大した顔じゃないだろう」




「なんだと!」





群雲は勢い良く立ち上がり、疾風をぽかぽかと殴った。




それを笑いながら避ける疾風の視界の端に、ふわふわと紅く揺れるものが映った。