しかし、泡雪に話しながら沙霧は、今まで誰にも話せずにいた暗い思いを吐き出せたことで、少し心が軽くなったような気がしていた。






(ーーーだからといって、可愛い弟を置いて宮を出たわたしの罪が、消えるわけではないのだが………)







沙霧がそんなことを思っている傍らで、泡雪は別の物思いをしていた。







(ある事情、とは何だろう………)







訊ねてみたかったが、沙霧の顔を見ていると、泡雪は問わないほうがいいような気がして、口を噤んだ。





ただ、いつも明るく朗らかな笑みを浮かべている沙霧が、心の奥底に暗い思いを隠しているらしいことに、泡雪は驚きを隠せない。







(―――まだ、知らないことが、たくさんあるんだな………)







そんなことを思いながら、冷めてしまった濁り酒を飲み干した。